前の記事では、友達のマスコットをむしりとって防犯カメラに映った話を書いた。
今回は、そのころ並行して積み重なっていた「もうひとつの違和感」の話。
字が、書けない。
「下手」じゃなくて「おぼつかない」
長子は本の虫やった。漫画も小説も好きで、読んで理解する力は高かった。話せばちゃんと考えてることも伝わる。絵も上手い——親フィルターを外しても、学校での評価も高かった。
なのに、字を書かせると何かがおかしかった。
低学年のうちは「字が下手な子なんやな」と思って、習字を検討したこともある。近くに教室が見つからなくて結局習わなかったけど。
高学年になっても、状況は変わらなかった。ひらがなとカタカナが混在する。漢字はほぼ書けない。テストで字・カタカナ間違いで×がつく。「苦手の域を超えてる気がするけど……」という感覚はあった。
でも、「違う!これは障害だ!」なんてならなかった。じわじわ、違和感が積み重なるだけ。
先生の見立ては「サボり」だった
担任の先生に相談したことがある。
「提出物も忘れがちやし、できないんじゃなくてサボってるだけ」——そういう評価やった。
そうかもしれへんな、とも思ってた。当時のコゼニーにとって長子は「問題を起こす子」で、サボりの評価も「まあそうか」と受け入れてしまっていた。
転機は、5年生の漢字の宿題やった。
号泣した。
5年生が、漢字の書き取りで号泣。「え……?」と思った。サボりたいにしても、泣くか?ここまで嫌か?この違和感は、さすがに無視できなかった。
取り出し授業は「満員御礼」
学校に、国語の取り出し授業をお願いしてみた。
まさかの満員。そんなに需要あるんや、とびっくりした。
折衷案として、休み時間に発達に詳しいサポートの先生が漢字の宿題を見てくれることになった。それだけで、長子の様子は少し落ち着いた。
「できない」をひとりで抱えなくていい環境が、ちょっとでも楽にしてくれたんやと思う。
年1回の通院で、全部ぶつけた
発達の通院は年に1回だった。そのタイミングで、溜まってたことを全部相談した。
お金のこと。友達トラブルのこと。そして、字が書けないこと。
先生から提案があった。「6年になったら、もう一度WISCと、LD(学習障害)の検査もしましょう」と。
小2のときにWISCを受けて以来、4年ぶりの再検査。長子は当時11歳8ヶ月だった。
「別人」の検査結果
結果を見て、コゼニーは思わず「え、同じ子?」と言った。
小2と小6の主な数値を並べてみる。
| 指標 | 小2 | 小6 |
|---|---|---|
| 言語理解(VCI) | 99(平均) | 120(非常に高い) |
| 視空間(VSI) | 111(高め) | 80(非常に低い) |
| 全検査IQ | 107 | 99 |
言語理解が99→120に跳ね上がっていた。パーセンタイルで91位——同学年の91%より高い水準。
一方、視空間処理は80。パーセンタイルで9位——下位9%。
その差、40ポイント。同じ子の脳の中に、全然違う2つの世界があった。

「本の虫なのに字が書けない」の謎が、ここでつながった。
読む力は爆伸びしてた。でも形を認識して書く力は低いまま。矛盾してるように見えて、全然別の話やったんや。
STRAW-R(読み書き検査)の結果
同時に受けたSTRAW-R(標準読み書きスクリーニング検査)の結果も衝撃やった。
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 音読(読む) | ✅ 同学年標準内 |
| 書取・ひらがな | ❌ −2SD(下位2〜3%) |
| 書取・カタカナ | ❌ −2SD(下位2〜3%) |
| 書取・漢字 | ❌❌ 基準16.5のところ6点 |
| 計算 | ✅ 標準内 |
読む→問題なし。計算→問題なし。書く→壊滅。
「−2SD」というのは、同学年の下位2〜3%の苦手さ、ということ。「苦手」じゃなくて「障害レベル」の困難さが、数字で出た。
高学年でもカタカナが混在してた理由。漢字の宿題で号泣してた理由。全部ここに繋がってた。
診断がおりたとき、ほっとした
これ、言いにくいんやけど正直に書く。
ADHD・ASD・LDの診断がおりたとき——ほっとした。
「性格が悪い」と思っていたことに、名前がついた。
性悪やなくて、仕様やった。
霧が晴れた感じ、とはこういうことか、と思った。問題が解決したわけじゃない。でも、見えてなかったものが見えるようになった。
投薬は、ノールックで選んだ
ADHDの衝動性には、薬がある。
賛否はある。アンチも多い。でもコゼニーも長子も、迷わなかった。
咳が止まらなくて辛かったら、咳止めを飲むやん?症状がマックスなのに「薬は飲まない」という選択肢、コゼニーにはなかった。困ってるんやもん。
投薬を選ぶかどうかは、それぞれの判断でいい。でも「薬=悪」ではない、とだけ伝えたい。
努力のベクトルを、変えた
LDの診断でいちばん大きかったのは、「書けないのは体質」とわかったことやった。
書かなくていい、ということじゃない。でも、「できないことをなんとかする努力」をしなくていいと決めた。
好き嫌いじゃなくて、アレルギーに近い感覚。食べた方が栄養的にいいのはわかってる。でも体が受け付けない食材を、無理して食べさせようとする親はいないやろ。
それより、「その栄養素を他で補う方法」を考える方が建設的やん。
漢字が書けないなら→ICTを使う。カタカナ表を見て確認していい。合理的配慮を申請する。
努力のベクトルを変える。これがコゼニーにとっての革命やった。
このシリーズの記事一覧
▶ Episode 1:娘がお金を盗んだ──発達グレーの衝動性と、怒鳴り続けた母の話
▶ Episode 2:「被害者やったのに加害者になった」──防犯カメラに映った日
▶ Episode 3:この記事
▶ Episode 4:診断後、何が変わったか(近日公開)
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※この記事はコゼニーの実体験をもとにしています。検査数値は個人を特定できない形で掲載しています。診断・投薬・医療に関する判断は必ず専門家にご相談ください。



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